香川・善通寺「宮川製麺所」が守り抜く昭和の原風景——黄金色に輝く「いりこ出汁」とセルフうどんの真髄【2026年現地取材】

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香川・善通寺「宮川製麺所」が守り抜く昭和の原風景——黄金色に輝く「いりこ出汁」とセルフうどんの真髄【2026年現地取材】
香川・善通寺「宮川製麺所」が守り抜く昭和の原風景——黄金色に輝く「いりこ出汁」とセルフうどんの真髄【2026年現地取材】
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🎵 香川・善通寺「宮川製麺所」が守り抜く昭和の原風景——黄金色に輝く「いりこ出汁」とセルフうどんの真髄【2026年現地取材】

宮川 製 麺 所の暖簾をくぐった瞬間、鼻腔を突くのは強烈な煮干しの香気だ。香川県善通寺市。四国霊場第75番札所・善通寺の門前町から少し離れた静かな住宅街に、その店はある。早朝から地元の常連客が吸い込まれるように店内へ消え、丼を手にした人々が思い思いの場所で黙々と麺をすする。近年の讃岐うどんブームで洗練された店舗が増えるなか、ここは時間が止まったかのような昭和のセルフスタイルを頑なに守り続けている。派手な看板も無ければ、過剰な接客もない。ただ、打ち立てのうどんと熱々の出汁があるだけだ。

観光客の波が押し寄せる現在の香川において、老舗として知られる宮川 製 麺 所が放つ存在感は異彩を放っている。セルフ形式の原点とも言える独特のシステムは、初めて訪れる者を一瞬戸惑わせるかもしれない。しかし、寸胴の底から網でいりこをまるごとすくい上げ、自分の手で出汁を注ぎ込む作業には、どこか童心をくすぐる高揚感がある。原材料費の高騰や伝統食文化の継承が議論される2026年現在も、この場所には讃岐うどん本来の温もりと誇りがしっかりと根を張っている。

寸胴鍋から漂う漆黒の旨味——黄金色に輝く「いりこ出汁」の衝動

宮川 製 麺 所

丼に盛られた真っ白な麺を手に持ち、調理場の奥へと進む。目の前に鎮座するのは、もうもうと湯気を立てる巨大な金属製の寸胴鍋だ。中を覗き込むと、澄んだ琥珀色のスープの底に、大量のいりこ(煮干し)が沈んでいるのが見える。柄の長い網杓子を底まで沈め、力強くすくい上げる。網の上には、しっかりと出汁を出し切ったいりこがゴロゴロと乗ってくる。

「いりこも一緒に丼に入れて食べてな」——店内に響く常連客や店主の威勢の良い声。おたまから直接丼へと出汁を注ぐと、煮干し特有の甘く芳醇な香りが一気に弾ける。エグみや臭みは一切ない。長時間の丁寧な下ごしらえと絶妙な火加減によって抽出された純粋な旨味だけが、熱々のスープに凝縮されている。一口すするだけで、口の中いっぱいに広がる濃密な魚介の風味。これこそが、他店では決して味わえない職人技の結晶だ。

製麺所だからこそ到達できる質感——喉越しと「コシ」の絶妙な黄金比

宮川 製 麺 所

うどんの命である麺についても触れなければならない。一般的な飲食店と異なり、ここは「製麺所」がそのまま食事処となった場所だ。朝早くから小麦粉を捏ね、生地を寝かせ、包丁で切り分けられた麺は、まさに生き物そのものと言える。

茹で上がったばかりの麺は、表面が滑らかでつややかだ。噛み締めると、歯を押し返すような力強い弾力——いわゆる「コシ」がしっかりと主張してくる。しかし、ただ硬いだけではない。中心部まで均一に火が通り、噛むほどに小麦本来の甘みがじんわりと広がっていく。冷たい「冷やし」で引き締まった麺の角を楽しむのも良し、熱い出汁をかけて少し柔らかくなったモチモチ感を堪能するのも良し。製麺所直営という圧倒的なフレッシュさが、一杯の満足度を極限まで高めている。

セルフ形式という名の文化遺産——善通寺の日常が紡ぐ暖かな空気感

宮川 製 麺 所

店内に入ってからの流れは、初訪問者にとって少しスリリングだ。自分で丼を選び、希望の玉数を告げる。受け取った麺をテボ(温め用のザル)に入れ、お湯の中で数秒泳がせる。好みの天ぷらやアゲをトッピングし、最後に出汁を注いで会計へと進む。すべてが客自身の手に委ねられている。

「最初は戸惑ったけれど、地元の人たちの真似をしながら出汁を注ぐ時間がたまらなく楽しい」。東京から訪れたという30代の旅行者はそう語る。店内にはテーブル席と座敷があり、見知らぬ客同士がごく自然に相席で腰を下ろす。新聞を読みながら黙々とすする近所のおじいさん、部活帰りに大盛りを平らげる高校生、SNSの評判を聞きつけてやってきた観光客。多様な人々が同じ空間で、同じ温かい湯気に包まれている。そこには効率化やマニュアル接客では絶対に再現できない、コミュニティの居場所としての温もりがある。

2026年、原材料高騰の荒波と立ち向かう「庶民の食卓」の意地

現在、日本の外食産業は未曾有のコスト高に見舞われている。小麦粉の価格改定、燃料費の上昇、そして何より良質ないりこの水揚げ量減少による仕入れ値の高騰だ。香川県内のうどん店でも値上げを余儀なくされるケースが相次ぎ、一杯数百円で食べられた「ワンコイン文化」の維持が叫ばれて久しい。

そうした厳しい経済環境のなかでも、地元客の日常を支える姿勢に揺らぎはない。無駄なコストを徹底的に削ぎ落とし、セルフ形式という効率的なオペレーションを守ることで、質の高い一杯を可能な限り手頃な価格で提供し続けている。「毎日のように来てくれる地元の人の顔があるからね」。店側の静かな決意が、今日も丼を満たすスープの深みに表れている。単なる飲食店を超えた、地域生活のインフラとしての責任感がそこにはある。

SNS時代における「あえて洗練されない」強みとディープな魅力

おしゃれなカフェ風店舗や、映えるトッピングを売りにするモダンなうどん店が次々と誕生する昨今。対照的に、年季の入った看板とパイプ椅子、昔ながらの麺茹で機が並ぶ店内は、一周回って新鮮な感動を呼んでいる。

TikTokやInstagramでは、寸胴から煮干しごと出汁をすくう動画が何万回も再生され、若年層やインバウンド客の探求心を刺激している。しかし、店自体はそうしたバズブームに耳を貸すことなく、淡々といつもの日常を繰り返し刻む。デジタル化が進む世の中だからこそ、手作業の温もりと「生の体験」が持つ説得力が増しているのだ。計算された演出ではない、本物の昭和ノスタルジーがここには残されている。

讃岐の原風景を未来へ——変わりゆく時代の中で確かな光を放つ場所

善通寺の街並みを歩けば、弘法大師生誕の地としての歴史と、うどん文化が深く結びついていることを実感する。朝の光が差し込む店舗から漂う出汁の香りは、この街の目覚まし時計のようなものだ。

時代がどれほど変化しようとも、一杯の丼を挟んで人々が笑顔を交わす景色は変わらない。うどん県香川の神髄を体験したいなら、まずはこの暖簾をくぐるべきだ。どんぶりいっぱいに注がれた黄金色のスープと、力強い手打ち麺。その一杯には、香川の人々が守り続けてきた食文化の誇りと、旅人の心を温めて離さない奇跡のような時間が詰まっている。 (出典: 宮川 製 麺 所(Yahoo!ニュース)